miyabi-night14

ああああああのっ

んだよ

ここここここれ、はなっ離して

やだね

ううううううう

雅紀が言うこれ、とは、俺が握って離さないこの手のことだ。

雅紀は恥ずかしいよぅって小さい声で言って俯きながら俺に引き摺られている。

目指すは食堂。朝ご飯。

何、櫻井、まさかの浮気?いいのか?大野が怒るぞ

うっせぇ

通りすがりの同級生が冷やかしながら通り過ぎてく。

だから俺と智くんはそんなんじゃねぇっつの勝手に話を作ってんじゃねぇっ。

俺は智くんに喰われたくない。

ぎゅって、手を握る。

俺は、雅紀を喰いたいんだ。

喰う。喰うぞ。美味しくな?

雅紀を、いずれ。そのうち。近?

想像したら、ニヤけた。

超絶美人とあーーーんなこととかこーーーんなこと。

俺。男子校に通い、はやどんだけ。

あっちこっちでソウイウノに遭遇してたから、普通に想像できる世界だったりする。

雅紀はどんな顔すんだ?どんな声出す?

やっべ、興奮する。俺も逞しくなったもんだ。最初はそれこそ遭遇するたびに悲鳴をあげてたってのに。

振り返れば雅紀は俯きつつ、ほぼほぼ真下を向いて歩きつつ、それでもぎゅって手を握り返してきてるから可愛いんだよ。堪らん。

雅紀が俺をどう思っているのかは結局聞けてないけど、キスも拒まないし手もこれだ。好かれてるに決まってる。

櫻井

あ?

次は誰だ

部屋から食堂までの短い移動。

なのにすれ違うヤツらに声をかけられるのがすでに何人目か分からない。

この、雅紀と繋いでる手のせいなんだけど、これは離さないって決めている。ほっとくと多分雅紀は絡まれるから。色目じゃなくて、揶揄いの的になるだろ。この見た目じゃ。

鬱陶しいぐらい長い前髪にメガネ。喋ればどもるし挙動不審。

俺とこうしてれば、大丈夫だろって。

でもあまりにも声をかけられるからウザくなってきて、思わずジロって見たら何と岡田寮長だった。

おわっ。お、おはようございます

おい、櫻井

は、はい

やっべ、睨んじゃったし。あ?とか言っちゃったし、俺何か言われんじゃね?ってすっげぇドキドキしてきて、すっげぇ汗も出てきて、岡田寮長の無駄にじいいいいいって見てくる顔も怖過ぎて逃げたい。

ずいっと近づいてくるから。

思わず一歩後ずさった。

なっ何すか?

顔、ニヤけすぎ

え?

岡田寮長はそれだけ言うと、スタスタと行ってしまった。

びっビビった。

ほぅって息を吐いたら今度は。

あのっしょーちゃん

雅紀に呼ばれて、不意打ちのしょーちゃん呼びに転げそうになった。

ん?どうした?

顔絶対ニヤけてるよなー。声からして違うよなー。何だこの声。俺こんな声出せんだなー。

立ち止まって、俯いてもじもじしてる雅紀を覗き込む。

雅紀の顔はメガネと前髪で隠れてて見えない。

誰が見てるか分かんねぇからなっ。前髪上げるのは部屋でだけでいい。

雅紀のキレイな顔を拝むのは俺だけでいい。

あのあのっ手、ちょっと、痛いです

え?あああああ、わりっ

どうやら岡田寮長にビビって、雅紀の手を握る力が入り過ぎていたらしい。

慌ててゆるめると、雅紀がくふふふって笑った。

笑った雅紀が雅紀があああああっ天使の微笑みまたまたゲットおおおおお

思わず部屋じゃないことがぶっ飛んで、ガバって抱き締めて、雅紀がひゃああああって叫んで、ざばーーーーーんって雨が降る音が聞こえた。

雨。ゲリラ豪雨

雅紀が叫ぶと雨が降る。

わけ、ないよな?

俺はまわりが注目する中、うううううって唸ってる雅紀の頭をぽんぽんって撫でた。